2007年7月24日火曜日

靴屋と鞄屋


先日、ミハラヤスヒロ氏がふらりとお店に来てくれました。
何年ぶりだろう?相変わらず本当に自然体な人で安心した。初めて会ったのは56年前だったか、コルボを始めたばかりで、合同展の端っこで一人でやっていた時だったかな。当時はナイロン全盛で皮革だけでやっている馬鹿はほとんどいなかったので、合同展だと高い、重いと言われるか、無言で出て行ってしまう人が多かった。自信満々実績皆無・・・。そんな中、他で招待されて来ていた三原君がふらりと来て、かなりじっくりと見てくれたのを覚えている。当時(今もだけど)彼はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、雑誌を開けば彼や彼の靴がでていた。聞いてみたい事がたくさんあった。結構気さくに修業時代の話や靴作りの話をしてくれたので聞き逃さないようにしているうちに結構長くなってしまいアシスタントのような人に催促されていた。
最後に一つ、この中の鞄でどれが好きか?を聞いた。世に出るにはデザイナーとして具体的にどの方向を優先すべきなんだ?それを知る為の質問だった。意外にも彼が選んだのはコルボの中では一番スタンダードなビジネス鞄Day by Day(デイバイデイ)でした。
逆反りのヘリ巻きの困難さや持ち手とそれを繋ぐ革ベロの細かな細工を短い時間で見抜いてくれていました。職人以外でそれに気付く人はいなかったので、正直驚きました。と同時に、俺はこのままでいいのかもな、と少し安心したのを思い出します。 
そしてその日も彼は店の鞄や財布達をゆっくりと見てくれて
「変わってないですね、同じ品質を維持するというのがすごいんですよ」と言われて、嬉しいやら恥ずかしいやら複雑だ。
またお茶でも飲みに来て下さいな。


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