2008年7月25日金曜日

Nebbia #3


大雨の日曜日の店番。

ずーっと生産していないNebbiaという鞄。
ずーっとこの鞄の大ファンでいてくれる革屋の大ちゃんに是非にと頼まれて
アトリエのエンドーが1stサンプルを見ながら試行錯誤して再現したネッビアがやっと完成した。

そいつをトンッと作業机の上に置き。遠目にジッ~ィと眺める。

棚にハタキをパタパタとかけつつ、鼻唄を唄いつつチラチラ眺める・・・
「う~ん、まぁまぁかぁ?・・・一つ目にしてはなかなかかぁ?」とブツブツ独り言を言いつつ過ごす。 大雨の日曜日だから暇だ。

雨の中お客様がご来店。 暇なのでお茶をおいれしてゆっくりと話に花を咲かす。

やみかかった雨の中お客様が乗ったハチ公バスをお見送り。店に戻る。

さてと、とまたトンッと鞄を置いて眺めなおす。「まぁまぁと言う事にしておくか」。

楽しくなってきやがったぞ。良い予感がする。

その夜は前祝いに麦酒。その一杯をマウロ君に捧げて
「前に進ませてもらいますよ」。
2杯目は前途に、3杯目はみんなに感謝して。

良い笑顔だねぇ* Nebbia おわり


2008年7月24日木曜日

Nebbia #2


これだというこの短い文ができた日

「頑張って!絶対いつか二人に俺の鞄をプレゼントしに行くからな」と
電話口で約束し深夜に一人胸に誓ったのをおぼえています。

・・・数年後俺たちは独立し、もう少しで2人との約束が叶いそうだった矢先、
彼は若くしてこの世を去り、友人はパートナーを失いました。
俺は約束を果たす事が出来ないままです。

一度も会うことのなかった友人。 訃報の後たった一度、夢の中で彼の姿を見た気がします。
オリーブの丘にたちこめる霧の中へ彼はこちらに背を向けたまま歩いて行き、
やがて鉛筆画の様になって霧の中に消えて行きました。

何かしなくてはと気持ちだけが焦り、力は全然足りませんでした。
その時出来たのは鞄を造る事だけで。
nebbia()と言う革に出合いnebbia()という鞄を作った。
ただそれだけだったのです。

* * * * * 明日につづく



2008年7月23日水曜日

Nebbia #1


CORBO.のロゴの下にある短いイタリア語の一文、

SIAMO NATI LIBERI

読み方は「シアーモ ナティ リィベリ」
「私()達は自由に生きるために生まれてきた。」
「俺()達は自由に生きる」

こんな意味等々を込めた明瞭で深く、明確になりすぎない。
イメージ通り鈍く光るこの一文。

イタリアのペルージャという小さな街で暮らしていた女友達と
彼女のイタリア人のパートナーが、日本から送ったレポート用紙45枚にもなってしまったCORBOに込めた意味をこの一文に凝縮してくれたのでした。

スローガンになる一文が見つかるまでは何度も何度も
FAXや国際電話でのやりとりがつづいたにも関わらず
全く迷惑そうにせず、逆に楽しんでくれている様子だったのが
ふとすると建ち上げの不安や孤独感に苛まれそうになる気持ちを
どれほど救ってくれた事か。

* * * * 明日につづく



2008年7月14日月曜日

20世紀からやって来たお財布


修理のご依頼で届いたお財布に添えられた手紙の内容に・・、
思わず窓の外、暮れゆく千駄ヶ谷の空に目を細めつつ、うんうんそうかいそうだったのかい・・。とうなずいてしまった。

ちょこっとご紹介させていただくと、

『手荒に使っているので、傷だらけで恥ずかしいのですが、
小銭入れ以外の部分はまだまだいけるのでは・・・と思います。』
『記憶をたどると、おそらく20世紀に購入したものと思われます。
それではよろしくお願い申し上げます。』

CORBO.にはかなり永年にわたってご愛用いただいているお客様が多くいらっしゃいますが
『20世紀』から使っていますという表現にはロマンを感じてしまったなぁ。

届いたお財布はとても良い表情で貫禄がありました。
小銭入れを新しく交換して、まだまだ現役続行です